流される三十路

まだまだ変わりたいアラサー

【Assa London】落ち込む冬こそ鍋を【部隊鍋】

今週のお題「最近おいしかったもの」

 

さいころからキムチ鍋が好きだった。

母が「今夜何が食べたい?」と言ったら、いつだって迷わず「キムチ鍋」と答えた。

だからうちでは年がら年中キムチ鍋を食べていた。

寒い日に家族みんなで湯気を囲んで食べるキムチ鍋はおいしい。

暑い日に、扇風機の風にあたりながら、汗をだくだくかいて食べるキムチ鍋もやっぱりおいしい。

具材いっぱいの鍋を空っぽにしたら、母が「もう一回分鍋の材料があるよ」と言ったときのうれしさ、シメのはずだった冷凍讃岐うどんがなんとなく物足りなくて、パントリーからサッポロラーメンを持ってくるときの、俄然みなぎってくる食欲。

実家を出て一人暮らしを始めてからも、冷蔵庫には桃屋のキムチの素を欠かさなかったし、週末にする作り置きはもっぱら白菜ときのこ類をジップロックに詰め込んで冷凍庫に放り込むだけの鍋セット、平日残業でどんなに遅く帰ってきても、どんなに心身ともに疲れ果てていても、キムチ鍋さえ食べれば心は穏やかになった。

 

ロンドンに来て半年近く経った。

ロンドンの冬は寒いくて暗くて長い。陰鬱な毎日でも、キムチ鍋があったら最高になるけど、そう上手くいかないのがこの都市だ。

最寄りのスーパーには、キムチはおろか白菜も豆腐も取り扱っていない。

正確に言えば「TOFU」はスーパーに売っているが、それは木綿とか絹とかそういう世界から逸脱したなにかであってわたしの知っている「豆腐」とは断じて違う。

一度だけ、日本食材屋で豆腐を買ったら1丁3ポンドもして驚いた。白菜も小ぶりながら強気の価格で庶民には手の届かない存在だ。

しかたなく辛ラーメンやノグリを代替品としていたが、それは単に「辛いもの欲」を少し鎮めただけで、「キムチ鍋欲」への効果は見られなかった。

 

そういうわけで、わたしはキムチ鍋を心の底から渇望していたので、夫が「外にご飯でも食べに行く?」と言ったときには、当然小躍りしながら韓国料理を提案した。

 

訪れたのはロンドン中心部SOHOにあるAssa。

Leicester Squareから徒歩5分ほどの距離にあるその店は、ネットの口コミによれば、時間帯によっては行列ができるほどの人気店らしい(予約不可であることも行列の要因かもしれないけれど。)。

開店時間である正午の5分前に店に到着すると、既に何名かが店の前で待っていたので、先人たちに倣い店のそばで待機した。

その、おかげで開店と同時に店に入ることができたが、テーブルは瞬く間に埋まってしまった。

 

頼んだのは

・ヤンニョムチキン

・牛肉部隊鍋(トッピングとしてライスケーキ、豆腐)

の2品。

注文後すぐ、ナムル2種と一緒にカセットコンロが運ばれてきた。

久しぶりに見たカセットコンロに胸が高鳴る。

周りを見るとほとんどのテーブルにカセットコンロがあったので、たぶん多くの人が部隊鍋を食べるのだと思う。

 

ヤンニョムチキンは衣がカリッとしていて、一つ一つのチキンがかなりボリューミー。甘辛いタレもちょうどいい辛さだった。

トッポギが入っていたのもうれしい。

はじめは「ラッポギも追加注文しようかな」などと抜かしていたが、後から来る部隊鍋の量も考えると、このとき追加しなくて大正解だった。

 

部隊鍋には、大量の牛肉の外にスパムやソーセージも入っていた。

メニューを見た限りでは野菜の記載がキムチ以外になかったが、ズッキーニらしきものや玉ねぎ、マッシュルームなど、意外と種類豊富に入っていて満足感が得られた。

豆腐は柔らかくて、まさに求めていたそれだし、ライスケーキ(トック)ももちろんおいしい。

太めのラーメンは具材の出汁を吸って絶品だ。

店員さんが火加減を調節したり、スープを追加したりと甲斐甲斐しく世話をしてくれるのもありがたい。

想像より少し辛いスープで汗だくになりながら、鍋の中の具材をほぼ空にしたとき、ほとんど肩で息をするくらいには満腹だったけれど、鍋に残ったスープとの名残惜しさから、結局ラーメンを追加で注文した。

 

汗を拭いながら店を出たとき、心は軽やかになっていた。

求めていた味がようやく摂取できていい気分だった。

ロンドンの外食は高いから、頻繁には無理だけれど、日本に帰る前にもう一回くらい行っておきたい。

 

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<行ったお店>

Assa London

Assa - Korean restaurant in London (assakorean.com)

23 Romilly St, London W1D 5AG