流される三十路

まだまだ変わりたいアラサー

【本と映画】お気に入りの物語さえあれば【及第点の日常】

今週のお題「元気を出す方法」

 

思い返せば、物心ついたときから「元気な日」は滅多になかったように思う。

幼稚園生の頃からずっと「行きたくない」が口癖で親を困らせた。

小中高と、完全に不登校になることはなかったものの月に1日は理由もなく学校を休んだ。

高校生のとき、登校途中(自宅から学校までは自転車で片道50分かかる)に急に「今日はやっぱり無理!」となって帰宅したこともあった(母は呆れていた)。

 

大学生になってからは、不思議と「行きたくない」という気持ちになることが減って、

授業の出席率はかなり良かった方だと思うし、アルバイトだって週6日していた。

社会人になって8年たつけど、体調不良も含め急遽休みをもらったのは1日だけ、

胃腸風邪でトイレから離れられなくなったとき。

毎日決められた場所にちゃんと行くのはできるようになったけど、それでもやっぱり「なんだか疲れている」のがデフォルトの状態で、「元気」なわけではない。

むしろ、「休む」という回復方法が無くなって、日々の「なんだか疲れている」状態がグレードアップした感じ。

 

というわけで、こんなわたしが「元気を出す方法」があるなら是非ご教示いただきたいよ、と言いたいところだが、

「滞りなく日常生活を送れる状態」に心を持っていく、人生をマシにしてくれるとっておきを、しんどいときに自分が見返す用の備忘録として、いくつかメモしておく。

 

<読書>

疲れているときに新しい本に取り掛かるのは心意気がいる。お気に入りを擦り切れるまで読みたい。

いつも手元に置いているのはこの2冊。

落下する夕方江國香織

別れた恋人の新しい恋人が、突然乗り込んできて、同居をはじめた。梨果にとって、いとおしいのは健吾なのに、彼は新しい恋人に会いにやってくる。新世代のスピリッツと空気感溢れる、リリカル・ストーリー。

Amazon.co.jp: 落下する夕方 (角川文庫 え 4-1) : 香織, 江國: 本

・キッチン/よしもとばなな

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う――。同居していた祖母を亡くし途方に暮れていた桜井みかげは、田辺家の台所を見て居候を決めた。友人の雄一、その母親のえり子さん(元は父親)との奇妙な生活が始まった。絶望の底で感じる人のあたたかさ、過ぎ去る時が与える癒し、生きることの輝きを描いた鮮烈なデビュー作にして、世界各国で読み継がれるベストセラー。「海燕」新人文学賞泉鏡花文学賞受賞作。

キッチン (角川文庫 よ 11-8) | 吉本 ばなな |本 | 通販 | Amazon

どちらも主人公が人生の困難(失恋・死別)をゆるやかに乗り越えていく物語。

透明感ある日常生活の描写、周りの身勝手さで生じる主人公の変化が、

自分で無理やり人生を操縦しようと思わなくたっていいのかもしれないと思わせてくれる。

 

落下する夕方』に出てくる華子はわたしの永遠のお気に入りで、会う男全員の人生を狂わせるファムファタル感が何とも言えない。

ほんの少ししかない荷物とか、纏足みたいに小さい足とか、驚くほど細いウエストとか、感情を揺らさない笑い方とか。

ただし、華子になりたい、と思ってしまうときは心がすごくすごく疲れているときなので、そういう日は読書はお休みして早く寝るに限る。

 

<映画>

こちらも、セリフを暗唱できそうになるぐらい繰り返し観たものがいい。

アメリ(2001)

幸せになる子供の頃から空想好きなアメリ・プーランそのまま大人になった彼女の好きなことは河での水切りやクレームブリュレの焦げを割ることそしてまわりの誰かを今より少しだけ幸せにすることそんな少し風変わりで、自分の事には不器用なアメリがある青年に恋をして…

Amazon.co.jp: アメリ(字幕版)を観る | Prime Video

・アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング(2018)

自分の容姿にコンプレックスがあり、仕事も恋も積極的になれないレネー(エイミー・シューマー)。ある日、自分を変えようと通いはじめたジムでハプニングに見舞われ、頭を打って気を失ってしまう。そして目覚めると、絶世の美女に変身していたのだ(とただの勘違い)!見た目はそのまま、超絶ポジティブな性格に生まれ変わったことでレネーは自信に満ち溢れ、仕事も恋愛もすべてが絶好調になるが…!?

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アメリは本当に数えきれないくらい見た。なんなら独身時代は毎晩観ていた。

英語学校で好きな映画について話すことがあって、わたしが「アメリ」と言ったら、

隣の席にいたフランス人の女の子が「わたしも」と同調してくれた。

彼女曰く、「アメリはファッションや家具がとにかくきれいで、目から摂る栄養」とのこと。確かに。

最後のパリを自転車で疾走するカットは心が温まる。

 

I feel prettyは、自分を周りと比べてしまって苦しいときに観る。

中盤レネーが調子こいて友達を傷つけてしまうところは心が痛いけれど、

最後にレネーがしたスピーチは、何回観ても泣いてしまう。

 

<お風呂>

明るいうちから入るお風呂は最高。

土日は特に、おやつの時間からお風呂に入り始めてしまうことが多かった。

普段は水道水を飲んでいるけど、ちょっといいお水を調達して、

しっかり汗をかくための入浴剤も使って、お気に入りの本や映画を持ち込んで、

「ここぞというとき用」でとっておいたスキンケアサンプルも惜しみなく全投入。

ゆっくり湯船につかった後は、いつもより丁寧に髪を洗って、スクラブだって使う。

スキンケアも、ボディケアも怠らず、全部済ませてお風呂を出てもまだ時間は17時で、手つかずの夜を思う存分堪能できる。

日本にいたときは平気で2~3時間かけていたお風呂タイム、ロンドンではバスタブがないのでお預け状態だけど、日本に帰ったら真っ先にやりたいことの一つ。

 

以上、「元気!」とまでは言えなくても、心身をとりあえず及第点にするためのリストでした。

【Assa London】落ち込む冬こそ鍋を【部隊鍋】

今週のお題「最近おいしかったもの」

 

さいころからキムチ鍋が好きだった。

母が「今夜何が食べたい?」と言ったら、いつだって迷わず「キムチ鍋」と答えた。

だからうちでは年がら年中キムチ鍋を食べていた。

寒い日に家族みんなで湯気を囲んで食べるキムチ鍋はおいしい。

暑い日に、扇風機の風にあたりながら、汗をだくだくかいて食べるキムチ鍋もやっぱりおいしい。

具材いっぱいの鍋を空っぽにしたら、母が「もう一回分鍋の材料があるよ」と言ったときのうれしさ、シメのはずだった冷凍讃岐うどんがなんとなく物足りなくて、パントリーからサッポロラーメンを持ってくるときの、俄然みなぎってくる食欲。

実家を出て一人暮らしを始めてからも、冷蔵庫には桃屋のキムチの素を欠かさなかったし、週末にする作り置きはもっぱら白菜ときのこ類をジップロックに詰め込んで冷凍庫に放り込むだけの鍋セット、平日残業でどんなに遅く帰ってきても、どんなに心身ともに疲れ果てていても、キムチ鍋さえ食べれば心は穏やかになった。

 

ロンドンに来て半年近く経った。

ロンドンの冬は寒いくて暗くて長い。陰鬱な毎日でも、キムチ鍋があったら最高になるけど、そう上手くいかないのがこの都市だ。

最寄りのスーパーには、キムチはおろか白菜も豆腐も取り扱っていない。

正確に言えば「TOFU」はスーパーに売っているが、それは木綿とか絹とかそういう世界から逸脱したなにかであってわたしの知っている「豆腐」とは断じて違う。

一度だけ、日本食材屋で豆腐を買ったら1丁3ポンドもして驚いた。白菜も小ぶりながら強気の価格で庶民には手の届かない存在だ。

しかたなく辛ラーメンやノグリを代替品としていたが、それは単に「辛いもの欲」を少し鎮めただけで、「キムチ鍋欲」への効果は見られなかった。

 

そういうわけで、わたしはキムチ鍋を心の底から渇望していたので、夫が「外にご飯でも食べに行く?」と言ったときには、当然小躍りしながら韓国料理を提案した。

 

訪れたのはロンドン中心部SOHOにあるAssa。

Leicester Squareから徒歩5分ほどの距離にあるその店は、ネットの口コミによれば、時間帯によっては行列ができるほどの人気店らしい(予約不可であることも行列の要因かもしれないけれど。)。

開店時間である正午の5分前に店に到着すると、既に何名かが店の前で待っていたので、先人たちに倣い店のそばで待機した。

その、おかげで開店と同時に店に入ることができたが、テーブルは瞬く間に埋まってしまった。

 

頼んだのは

・ヤンニョムチキン

・牛肉部隊鍋(トッピングとしてライスケーキ、豆腐)

の2品。

注文後すぐ、ナムル2種と一緒にカセットコンロが運ばれてきた。

久しぶりに見たカセットコンロに胸が高鳴る。

周りを見るとほとんどのテーブルにカセットコンロがあったので、たぶん多くの人が部隊鍋を食べるのだと思う。

 

ヤンニョムチキンは衣がカリッとしていて、一つ一つのチキンがかなりボリューミー。甘辛いタレもちょうどいい辛さだった。

トッポギが入っていたのもうれしい。

はじめは「ラッポギも追加注文しようかな」などと抜かしていたが、後から来る部隊鍋の量も考えると、このとき追加しなくて大正解だった。

 

部隊鍋には、大量の牛肉の外にスパムやソーセージも入っていた。

メニューを見た限りでは野菜の記載がキムチ以外になかったが、ズッキーニらしきものや玉ねぎ、マッシュルームなど、意外と種類豊富に入っていて満足感が得られた。

豆腐は柔らかくて、まさに求めていたそれだし、ライスケーキ(トック)ももちろんおいしい。

太めのラーメンは具材の出汁を吸って絶品だ。

店員さんが火加減を調節したり、スープを追加したりと甲斐甲斐しく世話をしてくれるのもありがたい。

想像より少し辛いスープで汗だくになりながら、鍋の中の具材をほぼ空にしたとき、ほとんど肩で息をするくらいには満腹だったけれど、鍋に残ったスープとの名残惜しさから、結局ラーメンを追加で注文した。

 

汗を拭いながら店を出たとき、心は軽やかになっていた。

求めていた味がようやく摂取できていい気分だった。

ロンドンの外食は高いから、頻繁には無理だけれど、日本に帰る前にもう一回くらい行っておきたい。

 

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<行ったお店>

Assa London

Assa - Korean restaurant in London (assakorean.com)

23 Romilly St, London W1D 5AG